読書(小説)

物語のおわり 湊かなえ 朝日文庫 感想文 解説 この本を参考に北海道を巡ろう!!

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書籍情報

書籍名物語のおわり
著者湊かなえ
発行日2018年1月30日
出版社朝日新聞出版

 

湊かなえさんとは!?

1973年、産まれであるから2019年現在45、46歳となる。
30歳過ぎまでは特に、執筆に関わっているわけではなく、大学も家政学部出身。
なんと言っても代表作は「告白」であるが、本人は

まず、作家であり続ける。そして『告白』が代表作でないようにしたい

と、告白を抜く一作を目指している。

彼女の作には、田舎が舞台であり、田舎に入ってきた企業や関連した人々が出てくることがおおく、今作「物語のおわり」では、サイクリングの描写も出てきているが、彼女自身、大学時代にサイクリング同好会に所属していることから、自身の体験を参考にしていると思われる。
広島県因島の柑橘系農家に産まれ、大学進学で兵庫に行き就職、海外赴任も経て、淡路島に落ち着く。愛媛県人である私にとっても親しみある地名ばかりである。

私は「告白」は読んだことがなく
「少女」「贖罪」「白ゆき姫殺人事件」「リバース」「ユートピア」
を読んだことがある。

物語のおわりの総評

「イヤミス」というジャンルを生み出した彼女であるが、その通り、私が読んできた作品も漏れなく後味が良くない。
その理由は、最後の最後まで完全なる一人称で語られている結果になる。

それも、それぞれの性格が明確に設定されているから、読者としては、このようになる。
登場人物A「世の中、お金じゃないのよ!性格よ、性格!」
などといっていたりする、しかも完全にその登場人物の主観なので、その人に都合の良い事ばかりが描写され、あたかもそれが真実であるかのように思わせる。
そこで読者は

ねこみかん
ねこみかん
まだまだ世間を分かっていないなぁ!違う違う!誰か、Aに教えてやってくれ!っていうか、言ってることとやっていること違うけど、自分では気付いてないの?

なんて、熱く突っ込みたくなる。

そんなもやもやを抱えながら、別の登場人物の話に進むと。
それはそれで痛快に、読者が思っていたことを指摘してくれたり、完膚なまでに否定していたりする。だけど、今度はその人の主観が大きくなるにつれて、またそれは違うんだよ!ってなってくる。

結局、読者も含めて、人はそれぞれ違う考え方ながら、誰も自分中心に考えていることに気付かず、「自分の見たいことしか見えていない」事に気付く。

そしてそのままエンディングを迎えるから、登場人物が「ハッピーエンド」みたいな雰囲気を醸し出していても「えっ??他の登場人物の気持ちはどうなるの??」それってどう考えてもおかしいよね?って後味が良くない。

今作がどうなるのかと言うと

ねこみかん
ねこみかん
第一章の終わりが、最強に後味が悪い!!

多くの読者が思ったはずだ!
「えっ?ここで終わり?これは短編集なの??」
って。私も、先に進む前にバラーっとページをメクって「ハムさん」の文字が出てきていることを確認して、安心して二章に進んだ。

その期待は再び裏切られる。

「物語のおわり」は、第一章だけが特別な構成になっていて。結局、結論は出るのか、出ないのか?分からない。というより、読み進めていくに連れて「空の彼方」はただの短編なのだというモヤモヤが募っていく。

では、読み進めよう

第一章 空の彼方

ちなみに、ここでも、銀行員である父の転勤で田舎にやってきた少女が現れる。彼女の作品に高確率で現れるこの設定、きっと作者自身になにか大きな記憶があるのだろう。
田舎のパン屋の娘、絵美は、慎ましやな生活の中に訪れたほんの少しのドラマティックな出会いによって、フィアンセと巡り合った。
順調に、パン屋さんを継ぎ、ささやかな幸せ目前で、突如、売れっ子作家「松木流星」に認められ弟子入りするという、夢見た小説家への道が訪れる。
周囲の反対を振り切り、一人上京するためバス停に向かうと、そこにはフィアンセ「ハムさん」の姿があった。

この物語はここで終わりです。

もしこれが短編集だったら、ここで終わりのちょうど良いかも知れない
ねこみかん
ねこみかん
いやいやあり得ない!わずか40ページの物語だけど、この物語をここで終わらせるなんてあり得ない。

過去へ未来へ

智子「35歳になった私はどんなふうにかんじるんだろう」
ほっ。ちゃんと続いているんだね。んっ?「隆一さん」なんだか旦那の名前が違うし・・・
どうも彼女は、絵美とは別人のようだ。

病死した父は、ドラマ制作に携わり、「松木流星」の作品を傑作ドラマとして残す。
船旅で知り合った「萌」から「空の彼方」の原稿を渡される。
智子は父と同じ病気を宣告された時、妊娠していた。子供を諦め、治療に専念するか、ムリを承知で出産するかの難しい選択で、自身の危険や、自身に何か有った時の周囲の上京も承知の上で、出産を選ぶ。

まず「松木流星」は当代一の女好きという情報が出てくる。
智子は、ハムさんに絵美が連れ戻され、しばらくは都会に思いを馳せながらも、ささやかな幸せに包まれていくのも良いと考えながらも、結局は厳しい条件付きで東京行きをハムさんと決定する。という終わりを紡いだ。

智子の出す続きは、一番全うかつ無難なものだと思う。

花咲く丘

拓真館と同じ名前を持つ「拓真」の話。
写真家になる夢を、実家のかまぼこ工場を次ぐという現実に阻まれた。でも本当は30歳になってもかなわない夢を諦める理由に安堵している知りたくない自分にも気付いていた。
その姿を絵美に重ねた結果、絵美は何も背負って無くて、軽い。
そんな軽い覚悟の絵美は作家として成功するとは思えない。だから、まだ上京を見送り、自身の気持ちと作品を熟成させるという物語を紡いだ。
魂を込めた作品は、いずれ誰かの目に留まるから、田舎に住んでいようと、都会に住んでいようと関係ない。
僕は、夢を諦めて家業を継ぐのではない。僕の魂が求めている作品を生み出すために敢えて夢を突き放すのだ。

と、絵美の姿と自身の姿を重ねながら、一旦夢から離れる自身の姿に納得していった。
この辺りが、湊かなえさん作品の難しいところだ、拓真は絵美の事を未熟と言いながら、自身は重いと言っているが、それでいても結局は、両親が第三子である拓真に家業を残してくれていたから、夢を諦めても食べていけるのだ。
だから、人によっては拓真も甘いと思うだろう・・・。

それはそうと、湊かなえさん自身も、地方在住である不利さに悔しさを感じたことが有り、どこか絵美と作者を重ねているのかもしれない。

拓真の出した続きというのは、諦めるわけでもなく、思い切るわけでもなく、中途半端だと思う。

 

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ワインディング・ロード

今回の主人公は綾、山間の田舎町から神戸に出てきたサイクリングを趣味にする大学生だから、かなり湊かなえさんとリンクしている。湊かなえさんの心理を知りたいと思えば、綾の気持ちが一番近いのかも知れない。

作家になれなかった人間が、TV番組制作に逃げていい番組を作れるのかという葛藤を抱える。ちなみに、これを悩みと読んで良いのかがいまいち分からない。
「子供の頃成りたかった職業に付く人は僅か数パーセントで、大学で専攻した職種に付く人でも3割り程度であるし、作家とTV番組制作、どちらが良いも悪いもない。
それの、多くは、彼氏「剛生」の言動によっているのだが、彼自身はっきり言って、共感出来る部分はないし、湊かなえさんの作品は時に「男性に対して容赦ない」、まさにその的となっているキャラクターと言える。

そして綾は物語のラストは、夢に向かって走り出す絵美をロマンチックに描写している。
また、「すずらん堂」という絵美と関係のありそうなパン屋を思い出す。

どちらかと言うと彼女のキャラクターは次章にこそ活きていると思う。

時を越えて

次はバイク乗り、娘の進路に関して納得ができず、妻とも揉めて旅に来た。

今度は絵美の物語を、「絵美の父親目線」で考えることになる。
彼は、彼自身の言葉では小説を紡がない。
「松木流星」という女たらしに娘を預ける親なんていない。もちろん連れ帰るべきだ!と言いながらも「まてよ」それが正しいことだとしても、娘の夢を絶ち、連れ帰る婚約者を許せるのか?という親の気持ちになる。そして・・・

結局は、その婚約者と自分が同じだということに気付く。

 



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湖上の花火

40代のキャリアウーマン、あかね。腎臓を二度壊すほど身体を酷使し、その代償として手に入れた休暇で、元恋人の夢の場所を訪れる。

彼女は「すずらん特急」という名もない作家の作品を、元恋人が手がけたことを知る。

あかねの批判は痛烈だ。
夢を追う、彼氏の事を受け入れられずに、仕事に没頭してきた彼女にとっては、ふわふわと夢を追う姿は、彼と重ねても気に触り、「結局、こういう女はどちらに転んでもそれなりに幸せに生きるのだ」という結論に達したうえで、ハムさんの堅実さを受け入れず都会に出ていく絵美の姿を紡いだ。

今までは、それなりに絵美に多少の苦言は呈しても、基本的には優しかった。けど、あかねの意見を聞くと、そうかもしれないと思えてもくる。
湊かなえ作品の怖いところだ。

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街の灯り

この辺りまでくると、私も、「空の彼方」の続きはないのか・・・こういう小説なのか・・・と諦めて楽しんでいた。

今度は、どうやら年配の男性の物語。
ハッと目に入ってくる文字が
「すずらんの君」
とはいえ、「すずらん特急」や「すずらん堂」も出てきたが未だ繋がってはいないので、なんだ思わせぶりか。と。

「すずらんの君はパン屋を経営している」

「なぁ、萌よ・・・」

この章で、物語は一気に急展開する。

旅路の果て

アンサー。
絵美の時代は、昔。

二章以降は現代。ネット世代。みなさんもご存知の通り、今では小説家を目指そうと思えば、投稿サイトがあり、どこでも、誰でも、小説家を目指すことが出来る時代となった。

青く、物事がもっとも単純でだった絵美の時代の悩みは、まだ単純だったのかも知れない。

現代、情報の氾濫で若者は選択することが出来ずに、どこでも自らを発信出来る便利な時代になったからこそ、ネット空間に境目はなく、どこにも逃げられない。スマホが時代を変えた、まさにそれを体現する。

絵美の小説をめぐり、様々な夢を追う人、諦めた人と関わる人達が紡いできた物語は、新旧青く古い時代と、現代の悩みが融合し、前向きに進んでいくことになる。

 最後に

この物語は、イヤミスではない。それなりにすっきりさせてくれる作品である。でも、そこで恐ろしい事に気付く。第一章で、「なんとすっきりしない物語」だと思い。続きがないことを残念に思っていたが、いざ、最後まで読んでみると、結末が出たことにどこか寂しさを感じている自分がいた。

湊かなえさんの登場人物は、圧倒的一人称なので、読んでいるこっちも色々批判してしまうが、その自分こそが
「物語の終わりが無いことをボヤきながら」
「物語の結末を知ると、またボヤいている」
そんな理不尽さを持っていることに気付いた。

結局、誰もがそんなもので、「物語のおわり」の登場人物もみんな、そんな自己矛盾を抱えているのである。

 


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